「HRテックって聞いたことはあるけど何を指してるの?」

「HRテックを導入するにはまず何をするべき?」

様々な業界や業務と同様に、人事領域においてもテック化が進んでいます。

HRテックとも呼ばれますが、従来の人事システムと何が違うのか、人事労務や人材管理がどう変わるのか、統一した定義はありませんよね。

ここでは東証一部上場企業で人事を9年経験し、SAPやSuccessFactorsをグローバルで展開してきた筆者が、HRテックについてわかりやすく解説いたします。

ぜひ参考にしてみてください。

HRテックとはなにか

HRテックとはHR(Human Resource)の人事業務に、テクノロジーを掛け合わせた造語です。

人事業務の効率化や高度化、ビジネス貢献を高めるテクノロジーツールを含む、テクノロジー化全体を指します。

テクノロジーの進化に合わせて、クラウドサービスやビッグデータ、RPA、AI(人工知能)などツールの発展も進んでいますよね。

対象の人事業務についても、単なる業務フローのシステム化ではなく、テクノロジーによる高度化によってビジネスや経営にさらなる貢献が求められています。

HRテックによって人事の機能や役割そのものが大きく変化していると言えるでしょう。

HRテックと人事システムとの違いは?

HRテックは従来の人事システムの延長でもありますし、新しい機能を備えたツールでもあります。

2000年代から人事労務領域のシステム化が進み、初めは勤怠管理などが主なシステムの役割でした。

そこからシステム化される人事機能が増えていき、2010年代ではタレントマネジメントが主要となり、社内リソースの見える化と最適化がテーマとなります。

さらに2020年代にかけて、HRテックとして従来の人材管理ツールに留まらず、人材育成や採用、社員のエンゲージメント向上、人的リソースの効率化や高度化など、人事が経営に貢献できる領域が増えてきていると言えます。

HRテックの導入はしやすくなってきた

2010年代と比較して、人事システムの導入や人事業務のテクノロジー化は容易になってきました。

サーバーや業務システムを自社で管理しなくてよいクラウド化が進み、外資を含めてベンダーも増えてきましたよね。

インターフェースも改善されてきました。

HRテックのベンダーは国内でも増えてきましたし、テクノロジーの進化に伴い導入障壁は下がっていると言えるでしょう。

HRテックの新興企業は2020年から倍増

日本でもHRテックとして上場を果たした企業もありますし、市場全体が拡大していますよね。

実際にHRテックの新興企業には世界中で資金が集まっており、2020年と比べても130%と倍以上になっているといったデータもあります。

海外が先行し、その後に日本にも同じ変化が来ているわけですから、今後もHRテック市場は拡大を続けていくと言えるでしょう。

コロナによってリモートワークが急速に早まったことも大いに関係していますよね。

今後もHRテック企業とそのサービスによる変化は大きくなっていくと予想されます。

HRテック市場は主に3つの機能にわかれる

HRテックは市場としても急成長していて、上場企業も国内外で誕生が続いていますよね。

HRテックは製品領域で分けると以下の3つが主要となります。

  1. 基幹人事システム(コアHCM)
  2. タレントマネジメントシステム
  3. 採用システム(採用テック)

人事としての基幹システム、2010年頃から発展してきたタレントマネジメントシステム、そして人事機能の根幹の1つである採用システムです。

全てを1つのシステムに集約できているケースは稀で、多くの場合は各社がニーズの高い領域からシステム化を進めていると言えるでしょう。

HRテックの導入を考える際は、特にどの分野から自社にとってテック化が必要か検討することをおすすめいたします。

グローバルでは複数の人事機能を含む包括的なHRテックも発展

HRテック領域において、人事基幹システムではSAP SuccessFactors、タレントマネジメントシステムではコーナーストーンなど、業界をリードしている企業はまだまだ海外勢となりますよね。

グローバルリーディングカンパニーの傾向を見ていると、人事基幹システム、採用システム、タレントマネジメントシステムといった個別の機能ごとではなく、1つのシステムに統合していくことで、よりシームレスなユーザーエクスペリエンスを追求していく流れがあると言えます。

筆者はSAPを使いグローバル共通の人事システムを構築し、SuccessFactorsを使いタレントマネジメントシステムを導入しましたが、現在ではSAP SuccessFactorsとなっていますよね。

さらにSAPは経費処理の大手であるConcurを統合しましたし、タレントマネジメントシステムなど単体の機能ではなく、他の人事機能とも連携していく全体像がより重要になっていくと考えられます。

(関連記事)タレントマネジメントとは?大手人事9年の筆者がタレントマネジメントシステムをわかりやすく解説

HRテックの課題と導入ポイント

人事システムやHRテックの導入はしやすくなってきましたが、それでも課題はいくつもあります。

カスタマイズをできるだけ減らすためにパッケージに合わせて業務フローを効率化していくことや、人事部のリテラシーを高めることも必要となりますよね。

またHRテックの導入は目的ではなく手段ですので、HRテックを使って何がしたいのかを明確にしなくてはなりません。

これには人事部だけではなく社長を含めた経営層との戦略策定が必須であり、多くの会社では課題となっていると言えるでしょう。

自社にとって本当に必要な機能は何かを定めた上で、予算内でHRテックを導入して活用していくことがあらゆる企業に求められています。

HRテックは直感的なインターフェースやレポート作成機能がポイント

HRテックを実際に使って仕事をするのは人事部員となりますよね。

人事部はシステム導入やデータ分析を専門としている人材ではないため、せっかく最先端のHRテックを時間とお金をかけて構築したとしても、上手く使いこなせないことが少なくありません。

実際にシステムを使うのは現場の人事ですので、トップ層からこのような分析をしろ、このような施策を打てと言われても、人事データベースやシステムをどう使えばよいのか分からない課題も多いでしょう。

そのためHRテックにおいて直感的に使えるインターフェースの重要性は増していますし、データ分析を1クリックでできるようなレポート作成機能も需要が高まっています。

専門性や時間がなくてもこのようなアウトプットが可能となることが、HRテックの大きなメリットとも言えますよね。

HRテックの目的は構築ではなく、使いこなす点であることは必ず覚えておいてください。

HRテックはデータドリブン人事を実現

HRテックには様々なツールや機能がありますが、人事部がデータドリブン人事を実現するシステムともなります。

データドリブンとはデータに基づいて計画を立てて、アクションを実行することです。

これまで人事領域はデータドリブンから遠い業務に位置し、昔ながらの人事では上司に気に入られなければ出世できないなどといった、データとは対極にある仕組みも存在していたでしょう。

人事は経験と勘で人を見るなどと言った話も聞いたことがあるかもしれません。

しかし現代では、人事データベースの構築とデータに基づくアクション、それを可能にするツールを使いこなすことが、当然ながら人事部にも求められています。

人事部にとってデータドリブンは慣れない領域かもしれませんが、人とデータを融合させて企業活動に貢献することが人事部にも必須となっていますよね。

データなどテックと無関係の人事領域は減り続ける

人事労務領域は非常に幅広く、事業に直接寄与する業務もあれば、売上に直接結びつかなくても企業活動として必須のオペレーションもあります。

どのような人事業務だとしても共通して言えることは、データと無関係の領域は今後減り続けるということです。

採用、昇進昇格、異動、タレントマネジメント、組織のエンゲージメント向上など、様々な分野でデータに基づき施策を打つことが求められていますよね。

従来のやり方をただ続けるのみの人事部や、データによって社員や組織を可視化できない企業は、効率性でも競争力でも負けていくことは明白でしょう。

人事部はシステムやデータと無関係どころか、もはや人事がデータドリブンでないことが企業活動の足かせにすらなり得ます。

人事と書いて「ひとごと」などと揶揄されることもありますが、ツールやデータは人事にとって他人事では済まなくなりました。

まとめ

HRテックによって人事業務が大きく変わってきています。

従来の人事業務のシステム化だけではなく、よりビジネスや経営への貢献も求められていますよね。

HRテックの導入もしやすくなってきましたが、それでも限られた予算の中でテクノロジーを通して何がしたいのかは必須のポイントとなります。

HRテックを上手く活用することで、人事部も単なる効率化を超えたビジネス貢献が可能となるでしょう。