「人事システムって導入したほうがいい?」

「どれくらい人事業務の効率化できる?」

人事労務の仕事においてもシステム化が進んでいます。

会社の規模に関わらず人事システムは重要となってきており、業務の効率化や経営戦略にまで影響を与えるシステムと言えるでしょう。

ここでは東証一部上場企業で人事を9年経験し、SAPやSuccessFactorsをグローバルで展開してきた筆者が、人事システムについてわかりやすく解説いたします。

ぜひ参考にしてみてください。

人事システムとは何?

人事システムとは人事労務に関わる業務を遂行するためのシステムです。

経理システムや調達システムなどと同様に、人事という領域でまとめたシステムと言えるでしょう。

人事業務は非常に幅広く、採用、教育、人材管理、給与計算、勤怠管理、スキル管理、タレントマネジメント、人事評価など、様々な機能に該当するシステムやモジュールが存在します。

数人の会社ならばExcelで代用できる部分もありますが、従業員数が増えていくにつれて正確かつ効率的に人事管理を行うために、人事システムの導入は必須となっていきますよね。

人事システムの発展

人事システムは20年かけて発展してきました。

2000年頃から人事労務領域においてシステム化が進み、当初は勤怠管理などが主なシステムの役割でした。

勤怠システムがなければ何時に出社をして何時に退社したかを従業員が毎日記入をし、それを人事部が手作業で計算するという途方もない作業が発生してしまいますよね。

そこからシステム化される人事労務機能が増えていき、2010年代ではタレントマネジメントが主要となりました。

社内リソースをシステムによって見える化し、異動やプロジェクトアサインなどを最適化していくことが目的となります。

そして2020年代にかけて、HRテックとも呼ばれていますが、人事システムは従来の管理ツールに留まらず、採用から人材の育成、社員のエンゲージメント向上、社内リソースの効率化や高度化などを目的とするようになりました。

人事が経営に貢献できる領域が増えてきており、それだけ人の活用が経営にとって重要となっていると言えるでしょう。

人事システムの種類

人事システムは人事機能の数だけシステムがあると言えます。

採用、教育、人材管理、給与計算、勤怠管理、スキル管理、タレントマネジメント、人事評価など、各機能をモジュールに持つことで全てを1つにまとめられる人事システムもありますが、それだけ構築が難しく、ベンダーのコストも膨れ上がります。

全ての機能を集約できる人事システムを構築すると何億円とコストがかかるケースもあるため、多くの企業では優先順位をつけて、必要な機能ごとに導入していくことが一般的でしょう。

HRIS(人事情報システム)とは?人事システムとの違いはある?

人事システムを詳しく調べていくと、HRISという言葉に出会うと思います。

HRISとは人事情報システムのことで、”Human Resource Information System”の略となり、担当者では周知の言葉となりますよね。

人事管理システムだけではなく、会社全体のERPシステムにおける人事領域を指す使い方もされます。

特に海外ではHRISという言葉は当たり前のように人事で使われています。

人事システムとの違いについては、人事システムもHRISも総称であるため、厳密に使い分ける必要はないと言えるでしょう。

人事システムは大きく3つの製品領域にわけられる

人事システムという言葉が指すものは企業や個人によっても変わりますが、人事システムは製品領域で分けることができます。

基幹人事システム(コアHCM)、タレントマネジメントシステム、採用システム(採用テック)の3つが主要と言えるでしょう。

また人事システムのグローバルリーディングカンパニーと呼べるSAPでは、タレントマネジメントシステムのSuccessFactorsを統合してSAP SuccessFactorsとし、経費処理大手のConcurを統合しSAP Concurとするなど、総合的でシームレスな人事システムに向かっていると考えられます。

グローバルのトレンドが日本企業に流れてくるわけですから、日本の人事システムソフトウェアやベンダーも、いずれ統合型を目指すことになるかもしれませんよね。

(関連記事)タレントマネジメントとは?大手人事9年の筆者がタレントマネジメントシステムをわかりやすく解説

人事システム導入のポイント

人事システム導入で非常に重要なことは、システムの導入は目的ではなく手段であるため、人事システムを通して何をしたいのかを明確にすることです。

人事データを網羅できるデータベースを、多額のコストと従業員の時間を使って作り上げたところで、その人事データを誰も使わないのであれば全く意味がありませんよね。

ポイントとしては、人事データやシステムを使うのは人事部だけではなく、ビジネス側や経営者の場合もあります。

ある意味ではビジネスに活用されなければビジネス貢献とは言えませんよね。

そのためどのような人事データが本当に必要なのか、実際に使われる人事システムは何かを、構築してしまう前に経営層や事業現場にヒアリングをして明確にする必要があります。

人事システムの課題

人事システムはとても便利な一方で、人事システムの費用を回収するのはビジネス側となります。

そのためビジネスにどう活用できるのかまで考えなくては、バックオフィス業務のコストが上がってしまうだけになりがちですよね。

また人事部にリテラシーのある人材がいないと、プロジェクトをベンダー任せにしがちで、その分コストは膨れ上がってしまいます。

人事システムの目的を明確にして、かつ導入と運用までを自社が主体で遂行できる人材を確保することが、人事システムで失敗しないために外せないポイントと言えるでしょう。

まとめ

人事システムは機能やベンダーも増えており、導入もしやすくなってきました。

一方で人事システムや人事データを何にどう使うのか明確にしておかないと、導入コストに見合う効果が得られず、ビジネスの利益をバックオフィスである人事が圧迫してしまうリスクすらあるでしょう。

経営層まで巻き込んで人事システムの目的を明確にした上で、かつベンダーの言いなりにならずに導入プロジェクトを遂行することが求められています。